Next Tech Week2026:AIは画面を飛び出し、現場で「自律的に動くパートナー」へ

2026年4月、東京で開催された最新テクノロジーの祭典「Next Tech Week」を視察してきました。今年の展示会場を歩いて最も強く感じたのは、AIがPCやクラウドの中から飛び出し、ロボティクスやウェアラブルデバイスとして「工場」や「店舗」といったリアルな現場へ本格的に進出しているということです。
これまでのAIは「人間のデジタル作業をどう効率化するか」が主眼でしたが、今年は「ソフトウェア上のAIエージェントとして自律的に業務を遂行する」だけでなく、「フィジカルAIとして現実世界で物理的に事業を前進させる」ソリューションが爆発的に増えていました。
トレンド1:現場(フィジカル)で動くAI〜ロボティクスとウェアラブルの躍進〜
今回の展示会で、デジタルからフィジカルへの移行を最も象徴していたのがこの領域です。空間を認識し、物理世界で自律的に作業をこなす技術が実用期に入っています。

■ あらゆる産業で働く次世代ヒューマノイドロボット「Galbot G1」
フィジカルAIの代表格として目を引いたのが、Galbot社のヒューマノイドロボット「Galbot G1」です。世界初のエンドツーエンド型フィジカルロボット基盤モデルを搭載し、流通・小売でのピッキング、医療現場での巡回や薬品運搬、工場での部品仕分け・組み立て作業などを自律的に行います。AIが物理的な「体」を持ち、24時間稼働で現場の生産性を最大化する未来がすでに具現化されていました。
■ VLM(視覚言語モデル)でロボットを遠隔操作「アラヤ」
画像とテキストを組み合わせて深く状況を理解する「VLM(Vision Language Model)」の社会実装も進んでいます。アラヤの展示では、テキスト指示や脳波などを利用してロボットアームを操作する技術や、物流現場のフォークリフトや人物の複雑な関係性をAIにグラフ構造として認識させ、事故防止に役立てるアプローチが紹介されていました。

■ 現場の「目」と「耳」となるAIネイティブ・ウェアラブル「THINKLET」
Fairy Devicesが展示していた「THINKLET」は、首掛け型のプログラマブルなウェアラブルカメラです。Wi-Fiだけでなく単体でLTE通信が可能であり、ハンズフリーで現場の視界を共有・記録できます。これを活用し、現場の作業動画を収集してAIで解析することで、作業トレーニングやヒューマンエラーによる不良品防止につなげるソリューションが紹介されていました。現場の「暗黙知」をAIで資産化する強力なデバイスです。
トレンド2:自律型AIエージェント〜営業から要件定義まで「自走」するAI〜
コンピューター内のソフトウェア領域においても、人が指示を出すのではなく、目標を与えればAIが自律的にプロセスを遂行する「AIエージェント」が主流になりつつあります。
■ 寝ている間に売上が生まれる?営業自律型AI「FlashIntel」
営業領域で目を引いたのが、FlashIntel Japanの「FlashClaw」です。AIが24時間365日休むことなく、見込み客の自動発掘からパーソナライズされたメール送信、アポ取得までを自律的に実行してくれます。翌朝出社すると新しい商談がパイプラインに入っているという、「AIワーカーと働く」世界観を体現していました。
■ 優秀なリーダーの「思考」をコピーする「Leaders AI」
DeNA AI Linkが提供する「Leaders AI」は、企業理念や部門戦略、優秀なリーダーの思考プロセスや判断基準といった「その企業らしさ」をAI化します。マネージャーに代わってAIがメンバーの壁打ち相手となったり、商談の戦略を練ったりすることで、組織全体の意思決定スピードと質を底上げする「組織のAI」として注目を集めていました。
■ システム開発の要件定義をAIと共同作業「Kakusill(カクシル)」
東京大学発スタートアップAtsumellの「Kakusill」は、システム開発でボトルネックになりがちな要求整理や要件定義をAIエージェントと共に行うツールです。現場の要望をAIが能動的にヒアリングしてRFPや仕様書に変換し、モックアップの自動生成まで連携することで、これまで1ヶ月かかっていた要件定義を1週間に短縮できるとのことです。
トレンド3:リアルとデジタルを繋ぐ「AIアバター接客」
人材不足が深刻化する小売やサービス業向けに、AIアバターを活用した対話型エージェントも、「待つ接客」から「攻めの接客」へと進化していました。
■ 感情や視線を読み取り「攻めの接客」を行う「WellAI」
WellAIの自己進化型AIアバターは、カメラを通じて顧客の視線や属性、手に持った商品を認識し、声のトーンから感情を分析して能動的な声がけを行うことが可能です。年齢や性別に合わせた論理的なアップセル提案まで行えるため、利益の最大化に貢献します。
■ 店舗・WEBを横断するエキスパート接客「ビーモーション」
ビーモーションの「接客オンデマンドAI」は、ハイセンスジャパンのテレビ売り場などで既に導入されています。製品の深い専門知識を持ったAIアバターが、多言語で24時間365日顧客の相談に乗り、店舗でもWEBサイト上でも一貫した高度な顧客体験を生み出しています。
トレンド4:データ活用を解き放つ「次世代セキュリティと証明技術」
AIの精度を上げるためには良質なデータが必要ですが、企業間のデータ共有にはセキュリティの壁があります。これを打破する技術もビジネスの基盤になりつつあります。
■ データを渡さずに事実を証明する「ゼロ知識証明 (Midnight)」
相手に生データを一切開示することなく、「条件を満たしている」という事実だけを暗号技術で証明できる「ゼロ知識証明」基盤のMidnightの展示がありました。これにより、プライバシーを守りながら安全にAI学習データを流通させたり、デジタル本人確認を行ったりすることが可能になります。また、Acompanyが提供する「データクリーンルーム」も、機密データを秘匿したまま企業間のデータ連携と分析を実現するソリューションとして注目されています。
まとめ:AIは「効率化だけ」するのか、「事業を前進させる」のか
今回のNext Tech Week全体を通じて、あるブースに掲げられていた「AIで『効率化だけ』するのか。AIで『事業を前進させる』のか。」というキャッチコピーが非常に本質を突いていると感じました。
マーケティング、新規事業開発、そしてリアルな現場のオペレーションにおいても、AIを「単なる便利なデジタルツール」として使うフェーズは終わりを迎えつつあります。コンピューター内での自律的な業務遂行はもちろん、ロボティクスやウェアラブルとして現場に進出したAIをいかに「自律的に動く優秀なパートナー」としてチームに迎え



