マーケティングWeekから読み解く、AIエージェント時代と新たな顧客体験(CX)
今年の4月、東京ビッグサイトで開催された「マーケティングWeek 春 2026」に足を運んできました。会場の東京ビッグサイトは最新のソリューションと多くのビジネスパーソンの熱気に包まれていましたが、そこから見えてきたのは、マーケティングやDX、そしてAIの活用が「次のフェーズ」へと完全に移行したという事実です。
今回は、私が会場の資料や展示から読み解いた「2026年のビジネスを動かす3つの潮流」についてお話ししたいと思います。

1. AIは「対話」から「自律実行(エージェント)」へ
これまで、多くの企業にとってAIは「質問に答えてくれるツール」や「壁打ち相手」でした。しかし、今年の展示で明確になったのは、AIが自ら考え、システムを操作し、業務を完遂する「AIエージェント」がより浸透期になっていることです。
たとえば、monoAI technology社が提供する「SuperCat」は、単なる対話型のAIではなく、社内システムに自らアクセスして在庫確認から発注までを自律的に終わらせるAIエージェントです。また、カイタク社が提供する「スパ電」は、Speach-to-Speach(音声から音声への直接変換)という最新技術を用い、人間のように自然な対話で電話応対を自動化するだけでなく、CRMや予約システムと連携して業務を完結させます。
AIは「人間の作業を少し楽にするもの」から「人間の代わりに業務をこなす頼れるチームメンバー」へと進化しています。自社のDXを考える際、「AIに何を答えさせるか」ではなく「AIに何の業務を任せるか」という視点への切り替えが急務です。
2. SEOから「LLMO(AI検索最適化)」へのパラダイムシフト
皆さんの顧客は今、Googleで検索しているでしょうか?それとも、ChatGPTやGeminiなどの生成AIに質問しているでしょうか? 今回のマーケティングWeekでひときわ注目を集めていたのが、LLMO(大規模言語モデル最適化)やAIO(AI Overviews)対策です。
SearchWriteAIの展示資料によれば、自然検索のCVR(コンバージョン率)が平均0.45%なのに対し、LLM(生成AI)経由のCVRは1.24%と高く、AIに「おすすめの企業」として引用されることの重要性が増しています。 また、独自AI対策ツールの「Forté.AI」の調査では、AIは回答を生成するために、引用するページの5〜7倍ものウェブページを参照していることが分かっています。
AI検索で自社が言及・引用されなければ、これからの時代、顧客の比較検討の土俵にすら上がれなくなります。従来型のSEOだけでなく、AIのクローラーに自社の情報をいかに正しく読み込ませるかという「AI検索対策」は、もはや待ったなしの経営課題と言えるでしょう。
3. 「体験」こそが最強の広告になる
デジタル化やAI化が極まる一方で、逆説的ですが「リアルな体験」の価値がかつてないほど高まっています。生活者の消費行動が「モノ消費」から「コト消費」へと移り変わる中、単に見るだけの広告ではなく、体験を通じてファンを創出するアプローチが成果を上げています。
たとえば、全国3分の1のファミリー層が利用する社会体験アプリ「ごっこランド」は、アプリ内での職業体験にとどまらず、ショッピングモールでのリアルイベント「ごっこランドEXPO」を開催し、オンラインとオフラインの両軸で子どもたちと企業の深いエンゲージメントを築いています。 さらに、ただの物販機だったガチャガチャをデジタルサイネージと融合させたIoTガチャ「GTCHA X」は、映像と音の演出によって通行人の足を止め、思わず回したくなる「体験型メディア」としてイベント集客や販促を劇的に変えています。
「体験は広告を超える」という言葉の通り、心を動かす体験の提供こそが、情報過多の時代に選ばれるブランドになるための最強の戦略です。
まとめ:私たちは「より人間らしい仕事」へ向かう
今回のマーケティング Weekで見えたのは、単なる便利ツールの羅列ではありません。
LLMOが質の高いリードを連れてき、PartnerPropが拡大の仕組みを整え、HintBotとアシスト機能が個人の戦闘力を極限まで高め、スパ電が定型業務を殲滅する。これらが統合されたとき、ビジネスモデルそのものが「型」で勝つスタイルへと変容します。
私たちが向き合うべきは、もはや「情報の記憶」や「定型的な作業」ではありません。AIが隣に座り、あらゆる知的な補助を提供してくれる時代において、最後に問われるのは「あなたにしか生み出せない付加価値」です。
「あなたの会社で、AIが隣に座ったとき、あなたは人間にしかできないどんな創造性を発揮しますか?」
この問いに答えを出すこと。それこそが、新しい時代のマーケティング・リーダーに課せられた、唯一にして最大の使命なのです。

